今日は足取りが軽い。
なんて言ったってマイキの新作スニーカー エアセブンをおろしたばかりだ。
街もいつも以上にキラキラ輝いてい見えるぜ!
へへっ
今日もみんな幸せそうだな。
平和で何より!
コーヒーでも買って公園でゆっくり、、
って、いけねえ、いけねえ。
今日はヒカリの誕生日プレゼントを買いに来たんだった。
付き合って半年。
しっかり良いところ見せないと。
前の彼氏は商社マンとか言ってたな。
俺も負けてられない。
やっぱり愛するヒカリへのプレゼントと言えば、ここだよな。表四道!
ブランドショップが立ち並んで眩しいぜ!
街のみんなもキラキラ光輝いている。
まずは、どんなものが流行ってるのかチェックだ。
〈ジロジロ〉
〈キョロキョロ〉
やっぱり、ここは凄いなあ。
グッチェにヴェトン、イブヨンローランか…
バッグに靴に、高級ブランドばかりだ。
男もイケてる奴らばかり。
あんな真っ赤のコート俺には着れねぇよ。
俺が喜んでたエアセブンなんて…
はぁ…。
溜め息ついてる場合じゃねぇ!
この日のために、
いっぱい残業して頑張ってきたんだ!
友達との旅行も断って、資格の試験も延期したんだ。
欲しかったコートだって。
まぁ、あのコートも、さっきの真っ赤なコートに比べたら…
はぁ…俺、何のために…
(おーい)
ん?
(おーい)
え?
(おーい)
???
(聞こえてるんだろ?)
え、なにこの声!
気持ち悪い!!
(おーい、こっちだよ)
あれ、あそこ?
なんか、、いる??
(そうだよ!こっちこっち!)
(やっと氣づいてくれたね!)
気のせいか?
でも、なんか霧がかってるような。
モワモワしてるような?
もしかして、、透明人間?!
(怖がらないで、こっちおいで)
なんだよ、気持ち悪いな。
とりあえず逃げ、、…
でも、このまま帰るのもなんか気持ち悪いし。
〈スタスタスタ…〉
なんだよ、お前!
(やっと話ができたね!)
(ずっと呼んでたんだよ。ずっと。)
だからなんなんだよ、お前!!
(僕はヒカリ、ヒカリだよ!)
えっ?!
ヒカリは…俺の彼女だろ!
大体お前光ってもないし、姿形もないじゃないか!声だって、なんか男の子みたいだぞ!
(ヒカリだよ、また話せて嬉しいよ)
は?!
お前なんだよ!
気持ち悪いなぁ!!
〈ザワザワ〉
あっ!ついでかい声をっ…
〈えっ何あの人?〉
〈急に大声出して〉
〈ザワザワ〉
〈目を合わせたらダメよ〉
〈ヤバー〉
〈ウケるー〉
〈ザワザワ〉
ひぃっ…
(はははっ)
(レオ、やっぱり面白いね!)
なんで俺の名前っ、、?!
まぁいいや、
とりあえずここを移動しなきゃ!
〈ダッダッダッッ…〉
はぁはぁここまでくれば大丈夫か。
なんだよ、俺。
頭おかしくなっちまったのか。
ヒカリのプレゼトも買わなきゃなんねぇのに。
まぁとりあえず、、
まずはカフェで落ち着こう。
近くにカフェでもあれ…
(そこの曲がり角の手前、地下にカフェがあるよ。今は誰もお客はいないよ)
そうか、良かっ…
ってなんでもお前もついてきてんだよ!!!
〈ザワザワ〉
あっ、やべっ!
とりあえず、行くぞ!
〈ダッダッダッッ…〉
おっ看板発見!
ここの地下、か。
また高そうな店だなぁ。
まぁいいや、とりあえず。
〈スタスタスタ…〉
〈カランコロンカラン〉
〈いらっしゃいませ〉
ふた…
〈1名様でよろしいですか?〉
あ、はい!
ひとりです!
なんで、俺2人って、、
まぁいいや。
〈こちらの席へどうぞ〉
ありがとうございます。
本日のコーヒーブラックでお願いします。
〈かしこまりました〉
はぁ。
俺どうしちまったんだ。
頭が重たい。
頭を抱えずにはいられない。
表四道で醜態を晒しちまった。
人もあんなに集まってた。
TekTekやツイッテーに動画流されないと良いけど。
あんなのバレたらヒカリにも。
ってか、ヒカリのプレゼント!…
はぁ。。
俺も皆んなみたいにお金があれば…
自慢の彼氏にならなきゃいけねぇのに。
はぁ。悩みが絶えねぇ。
なんて生きづらい世の中なんだ。
〈お待たせしました、本日のコーヒー、コロンビアでございます。〉
わっ!あ、ありがとうございます。
とりあえず、コーヒーを飲んで落ち着こう。
そうしよう。そうしよう。
(そうしよう、そうしよう…)
(そうしようるい!双子葉類!)
わっ!なんだよ、またお前か!
なんだよ、双子葉類って!
つまんねぇな!
(あははは!)
つまんねぇって!
(あはははは!)
はぁ…。
でも…そういや、昔俺もそんなこと言ってたっけ。
理科の授業で単子葉類と双子葉類を習って、クラスのみんなとさ。
(思い出した?)
え?
は?
(そうしよう、そうしよう)
(そうしようるい!そうしようるい!)
だから、なんだよ。
な、なんでお前が知ってんだよ!
(久しぶりに会えたのにヒドイじゃないか)
(そんな悪口ばっかり)
え?
(そんなことよりさ、今日は何しに来たの?)
そりゃた自慢の彼女ヒカリのために誕生日プレゼントを買いに来たのさ!
ヒカリは俺には似合わないくらい可愛くて、頭が良くて、みんなの人気者さ!
ヒカリ喜ばせるためなら俺はなんだってできるんだ!
(そっか、良かった)
(素敵な人を見つけたんだね!)
おう!
だから俺も釣り合えるように努力して、お金も貯めて、今日はヒカリに喜んでもらえるようなプレゼントを買う!
そして、ヒカリの自慢の彼氏になるのさ!
(そっかあ)
(ヒカリちゃんは何が好きなの?)
え?
たぶんカバンとかたくさん持ってたような…
(ヒカリちゃんの趣味は?)
えーっと、、
(好きな色は?)
んーー
(好きな食べ物は?)
(アレルギーとか苦手なものは?)
あれ?なんで出てこないんだろう、、
こんなにヒカリのこと好きなのに。
(じゃあ、レオは何が好きなの?)
えっ?!
(レオの趣味は?好きなものは?)
(好きな色は?好きな音楽は?)
(何してるときが楽しい?)
(一番の思い出は?)
や、やめろよ!急に!!
そんな質問責めしてくんなよ!
でも、なんだろう。
俺って何が好きなんだろう。。
お、俺はヒカリが好きだ!
ヒカリが幸せになることが俺の幸せなんだ!
だから、俺はヒカリのためならどんなことだって我慢できるし、頑張れる!
俺の人生はヒカリのためにあるんだ!!!
……ぁ
…はぁはぁ
はぁ。
(本当は?)
え、、
(本当は?)
、、、
(本当は、どうしたいの?)
どうって、、
、、、。
本当にヒカリのためならなんだっ…
(本当に?)
っう…
(本当は?)
本当は、、、
分からない。
(うん)
分からないんだ。
どうして良いか。
うっうっ…
分からない…
うっうっ…
こんなとこで、涙なんか、、、っ。
(レオ、目を開けて)
うっうっうっ、、
(僕たちはずっと一緒だったんだよ)
へっ?、、
(本当だよ、僕たちはずっと一緒にいた)
そんな、、
(レオ、こっち向いて)
(本当にずっと一緒にいたんだよ)
(本当だよ、本当だよ、、ほんとうだよ)
(、、ほ、ん、、とう、だ、、、)
あれ?意識が、、、
光が、目の奥に入っていくような、、
なんだ、、これ、、ふしぎな、、
、、、、
、、、、、、、
、、、、、、、、
〈ねぇねぇ、どうする?〉
〈何して遊ぼっかぁ〉
〈はーい!オレ野球がいい!〉
〈いいねいいね!〉
〈そうしよう、そうしよう!〉
〈そうしようるい!そうしようるい!〉
〈はははは!〉
あれ?ここは?
あ、皿森公園だ。
小さい頃よく遊んだっけな
って、あれはチビスケのオレ!!
なんで?!
どうなってんだよ!今日は!
(思い出した?)
わっ、お前か。
こうなったらちっとのこじゃ驚かねえぞ。
(ははは)
笑ってんじゃねぇ!
でも、俺もあんな風にはしゃいでだときがあったなぁ。
(…ふふ)
わっ、また光が、、、!
〜〜〜
〈ザー ザザー ザー ザザー〉
ここは、、海?
〈父さん!いくよー!えいっ!〉
〈おーしっかり投げれるじゃないか〉
〈レオはいつも練習しとるもんね〉
〈良かったね、父さんにみてもらえて〉
あ、これ、初めて父ちゃんとキャッチボールしたときだ。
確か家族で旅行に行って、その浜辺で。
嬉しかったなあ。
母ちゃんにもたまに練習付き合ってもらってたんだよな。
忙しかっただろうに、、
俺のために、、
ごめんな。うっうっ…
(あれれ〜また泣いてるの?)
仕方ねぇだろ、勝手に出るんだから。
父ちゃんは病気がちだったから、母ちゃんが働いて家事もして、俺たちのことも育ててくれたんだ!
バカにすんじゃねぇ!うっうっ。
(知ってるよ)
なんで、うっ、お前が知ってんだよ!
(ずっと一緒にいたんだよ、僕たち)
だからなんだよそれ
(思い出して、よーく、思い出してみて)
うっ、うっうっ、、うっ。
なんなんだよ、これ。
なにを見せられてんだよ、オレは。
もうイヤだ。
よく分かんない!
何もかも!
どうしろってんだ。
ヒカリに釣り合うために頑張って頑張って。
自分をよく見せようと思っても、
いつも上には上がいる。
どんだけ頑張っても、、
ヒカリの好きなことも答えられない。
俺って、、俺って、、。
俺って、なんなんだよ。
昔はなんでも光って見えた。
毎日がキラキラしてやりたいことをやってた。
家も裕福じゃなかったけど、やりたいことはやらしてくれた。
野球も塾も習字も、なんだって。。
母ちゃん、、ありがとう。。
うっうぅ…。
今の俺は、、なんだよ。
周りばっかりキラキラ見えて、
皆んなが光って見える。
まるでオレにだけ光が当たってないみたい…
ひか…り。
ヒカリ。
俺も昔は光ってた…?
俺にも光があったのか…
もしかして、、
さっき見たチビスケのオレは光ってた!
もしかして、お前…
オレ、、なのか、、、?
(やっと思い出してくれたね)
(ずっと見てたよ)
くっうぅっ…うっうっ…。
オレは、オレは、、うっ。
(レオ、本当は、どうしたいの?)
本当は、本当は、オレは…
オレは、、、
(あのね、今だよ)
えっ?
(本当に大切なのは今だよ)
(今日が何より大切なんだ)
そうだ、あの頃は将来のことなんて何も…
毎日毎日一生懸命だった
遊びもケンカも笑うのも泣くのも
本氣だった。
こんなに泣くのだって
もういつぶりだよ。。。
俺はこれからどうしたら。。。
本当は、どうしたいんだよ。。。
本当は、本当は、本当は。。。
(レオ)
(明けない夜はないんだよ)
?!
(でしょ?)
うん。
そうだ。
母ちゃんが言ってた言葉だ。
明けない夜はないって。
どんなに辛いときがあっても、必ず朝になって太陽は昇るんだって。
オレ、ちょっと思い出したよ。
よく分かんないけど、、
俺にもヒカリがあったんだ。
なんで、
なんで、忘れてたんだろう。
(うんうん)
(あははは)
光、、ひかり、、ヒカリ、、、
〈キラキラキラキラ〜〉
〈…ですか?〉
〈…ぶですか?〉
ん?
〈大丈夫ですか?お客さま〉
〈大変うなされておりましたが…〉
はあっ!
い、いえ、問題ありません!
すみません!
お会計は!
〈こちらになります〉
じゃあ、これで!
ありがとうございました!
〈バッバッザザッ〉
〈あ、はい。ありがとうございました〉
〈カランコロンカラン〉
〈ダッダッダッダッダッ…〉
はぁはぁ。
はぁはぁ。
はぁはぁ。
今が大切…か。
いま、、今日、、
たしか…今日って…3月1日…。
明日は…
母ちゃんの誕生日だ。
オレ…。
オレ、、オレ、、!
〈ダッダッダッダッッ〉
(そうしようるい!そうしようるい!)
(ははは〜)
【おしまい】